映画「NANA」におけるビジネス戦略:レポート(11/20) | アニメ!アニメ!

映画「NANA」におけるビジネス戦略:レポート(11/20)

 昨年、今年と映画界で好調な邦画だが、なかでも特に注目を浴びているのがマンガ原作の実写映画化である。そして、マンガ原作の実写映画化ブームの中で、ひと際大きな成功を収めたのが今年9月に公開された大谷健太郎監督の『NANA』だ。
 その映画『NANA』の成功を実現

イベント・レポート
注目記事
 昨年、今年と映画界で好調な邦画だが、なかでも特に注目を浴びているのがマンガ原作の実写映画化である。そして、マンガ原作の実写映画化ブームの中で、ひと際大きな成功を収めたのが今年9月に公開された大谷健太郎監督の『NANA』だ。
 その映画『NANA』の成功を実現させたプロデューサーによるシンポジウム『映画「NANA」におけるビジネス戦略』 が、11月19日にWAOクリエイティブカレッジ東京校で開催された。

NANA1.JPG 映画「NANA」のプロデュースは、濱名氏自ら「おやじトロイカ体制」と名乗る3人のプロデューサーが中心となって進められた。今回のシンポジウムは、その中からTBS映画部の濱名一哉氏とIMJエンタテイメントの久保田修氏が参加する豪華な顔ぶれとなった。また、モデレーターとして日経エンタテイメント!発行人の品田英雄氏が参加した。

 濱名氏によれば、矢沢あい原作の人気マンガ『NANA』は、当初から映像化権の獲得で熾烈な争いがあった。なぜその中からTBSが選ばれたのか今でも判らないが、当時、他のテレビ局はテレビドラマの提案だったのに対して、映画化を提案したテレビ局はTBSだけであったという。
 またマンガ原作の関連で言えば、原作の認知度が高いことはやはり映画宣伝では重要である。特に、今回の『NANA』は、多くの実写化されるマンガ原作が連載終了後の作品だが、連載継続中というの強みがあったという。

 原作を利用した映画を作る際によく考えられるのは、作品がヒットするのは優れた原作のおかげで、放っておいても自然にヒットするでないかということだ。つまり、ブームは自然発生的に起き、マーケティングはあまり重要でないという考え方である。
 しかし、今回のシンポジウムでは、優れた原作であればあるほど期待値が高くなりビジネスも難しくなる現実が垣間見えた。久保田氏は、興収10億円以上がなければ合格とされない作品は初めてであると言う。そうした期待をいかに実現させるかがプロデューサーには求められている。
 実際の『NANA』の興収はおよそ40億円なので、公開前に興収20億円は狙えるのではないかと考えていたという濱名氏や久保田氏の予想をも大きく越える大ヒットだったと言っていいだろう。

NANA2.JPG 結局、人気マンガ原作の映画化で求められるのは、優れた原作の持つ本質をどのように映像の世界に引き出すかと、その魅力を充分にコンシュマーに広げることの出来る戦略であり、マーケティングなのである。
 今回の映画『NANA』であれば、原作の世界観の映像化実現や映画の中の音楽を現実の世界で展開する音楽面での面白さである。また、コンビニエンスストアや携帯端末サービス、カラオケといった生活に身近な部分を利用した作品の露出戦略などもこれに当る。作品の製作管理だけでなく、こうした細かな戦略を立て成功を拡大させるのが濱名氏や久保田氏のような優れたプロデューサーの存在である。

 シンポジウムの最後にプロデューサーの資質についての意見を求められた濱名氏は、無から有を作り出すのがプロデューサーの仕事、また、自分の意見を持ちながらも作品に対して客観的な視点を持ち続けられることが大切と述べた。
 また、久保田氏は、優れたプロデューサーがどういった人であるかは一概に言えない、しかし、映画製作は注文を受けて商品を作るのでなく、人が求めているものを想像して作品を作る仕事という特徴があるという。そして、そうした中では仕事に対するパッションが非常に重要だという。
 さらに、映画を作り出すと色々なことが起こるが、作品を作る際の原点を忘れてはいけない、また、プロデューサーになるには色々な道があり正解はないが、常にその道を探し続けている人がなれるのでないかと語った。

映画ビジネス最前線 プロデューサーシンポジウム
『映画「NANA」におけるビジネス戦略』
講師: 濱名一哉氏(/㈱TBSテレビ 映像事業部担当部長)
   久保田修氏 (/㈱IMJエンタテインメント 取締役/プロデューサー)  
モデレーター: 品田英雄氏 (/日経エンタテインメント!発行人)
日時: 11月18日 
主催:/WAO大学院大学(認可申請中)

/映画『NANA』公式サイト
《animeanime》
【注目の記事】[PR]

特集