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劇場アニメとテレビアニメ

 『劇場版鋼の錬金術師‐シャンバラを往く者‐』の興行が好調な出足を見せている。これは、この春公開された『劇場版機動戦士Zガンダム‐星を継ぐ者‐』の予想を越える好調ぶりと合せて大人向けの劇場アニメの現状について考えさせられる。
それはまた、昨年やはり大人

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 『劇場版鋼の錬金術師‐シャンバラを往く者‐』の興行が好調な出足を見せている。これは、この春公開された『劇場版機動戦士Zガンダム‐星を継ぐ者‐』の予想を越える好調ぶりと合せて大人向けの劇場アニメの現状について考えさせられる。
それはまた、昨年やはり大人向けの顧客層を狙った『イノセンス』、『スチームボーイ』といった作品の興行が思ったほど伸びなかったこととも関係がある。
 この4作品の類似点は『ポケモン』や『名探偵コナン』といった作品より高い年齢に向けて作られた作品である。そして相違点は、『ハガレン』と『Zガンダム』がテレビアニメから派生した作品であるのに対して、『イノセンス』、『スチームボーイ』が劇場オリジナルの作品である点だ。両者の他の大きな相違である制作費の違いや製作期間の違いは、こうした違いから生じる副次的なものである。

 これらの作品の興行成績は、日本映画製作者連盟によれば『イノセンス』が10億円、『スチームボーイ』が11億6000万円である。一方『Zガンダム』は、現在9億円から10億円が予想されており、また、『ハガレン』の興収が『スチームボーイ』のそれを上回ってくる可能性は極めて高いだろう。それぞれの興行収入はよく似た水準にあるが、製作期間、制作費から考えた投資効率を考えると、製作期間が短く、制作費も低い『Zガンダム』と『ハガレン』のパフォーマンスの良さが際立っている。
 ではなぜ『Zガンダム』や『ハガレン』は『イノセンス』や『スチームボーイ』に匹敵する、もしくはそれを上回るほどの成績を残すことが出来るのだろうか。それは、『イノセンス』や『スチームボーイ』の2作品が劇場用のオリジナル作品であり、後者がテレビ作品の劇場展開であるためだ。

 よくマンガ原作のテレビアニメ化がリスクの低いものとして指摘される。それは、マンガ市場での競争を勝ち抜いてきた作品は、既にマンガ市場の中で選別されているからだという。同様の関係が劇場アニメとテレビアニメの関係の中でも言える。
 つまり、数多くのテレビアニメ作品の中で視聴者の人気をある程度確認出来た作品のみが劇場アニメ化される。このためオリジナルの劇場アニメに較べて、テレビアニメ発の劇場アニメはある程度の人気が確保されており大きなはずれはない。1年以上に亘るテレビ放映の中で、視聴者の高い認知度を確保していることも理由であろう。これは、子供向けのアニメ、大人向けのアニメに両方に通じることだ。こうした効果はアニメだけでなく、『踊る大捜査線』といった日本映画の一部にも見られる特徴かもしれない。

 では、リスクの少ないテレビアニメ作品の新作のみをアニメ製作会社は作ればいいのかという話でもない。むしろ劇場オリジナル作品に必要なのは、高いリスクを前提にした市場のニーズを読み取ることや市場戦略である。それでもヒットは約束されたものではないが、まず観客が何を望んでいるかの出発点は不可欠であろう。
 『イノセンス』や『スチームボーイ』のDVDの売れ行きはかなり好調であり、長期的に考えれば採算が取れるという事情は理解している。しかし、出発点が劇場アニメであるならば、まず劇場で大ヒットすることが必要であると思うし、それが大人向けのアニメという日本のみが開拓したアニメ市場の発展につながると信じている。
《animeanime》
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