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『文化庁メディア芸術祭』レポート

 文化庁メディア芸術祭の受賞作品を集め紹介する『文化庁メディア芸術祭受賞作品展』が2月25日より開催されている。3月5日に展覧会に行ってきたが大盛況であった。観客の目を惹きやすいアニメーション部門やマンガ部門、エンターテイメント部門だけでなく、アート部門

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 文化庁メディア芸術祭の受賞作品を集め紹介する『文化庁メディア芸術祭受賞作品展』が2月25日より開催されている。3月5日に展覧会に行ってきたが大盛況であった。観客の目を惹きやすいアニメーション部門やマンガ部門、エンターテイメント部門だけでなく、アート部門や学生CGコンテストといった部門も観客の大きな関心を集めていた。
 これは、アート部門も含めて視覚や聴覚といった五感に強く訴える作品が多かったことが理由であろう。また、アート部門においてもインタラクティブな作品が多く、楽しみながら観覧出来る作品が多かった。
 メディアを扱った作品に限るとアートとエンターテイメントの領域は大きくクロスオーバーし、限りなく接近しているようだ。アートもエンターテイメントであり、エンターテイメントの中にも芸術性が発見出来るわけだ。むしろ、そうした両者の接近こそが、この展覧会が敢えてアート部門、エンターテイメント部門、アニメーション部門、マンガ部門を設けている理由なのであろう。
 
 アニメーション長編部門の特徴は、今のアニメーションの現状をそのまま現すかのような候補作品の幅広さにあった。大賞、優秀賞の3作品が実験映像的な要素が強い『マインド・ゲーム』、娯楽大作の『ハウルの動く城』、児童向け作品の『まかせてイルか!』と全く異なる属性を持つ作品であることがそれを示している。推薦候補作品も含めた12作品は大人向けから子供向け、劇場大作から深夜帯のTV作品にまで及んでいる。
 しかし、そうした幅広さは、作品評価をするうえでの基準をどこにおくかといった問題も孕んでいる。今回の大賞決定に至るまで大激論があったことを審査委員の一人である神村幸子氏は、作品講評において明らかにしている。
 この講評によれば、大賞の選考過程で審査員が『ハウルの動く城』を推す2名と『マインド・ゲーム』を推す3名とに分かれた。また、審査員による評点合計では『ハウルの動く城』が1位、『マインド・ゲーム』が2位であったとしている。審査委員長の富野由悠季氏は審査講評で
“大賞の候補になった『ハウルの動く城』と『マインド・ゲーム』については、前者の手堅い作りとメジャーの力量を認めるものの、結末について作品テーマとの齟齬を認めざるを得ないという議論があった。後者については、表現のあり方が本芸術祭にふさわしくないのではないかという議論があった”
とも述べている。
 こうした、作品の評価の違いは異なる属性の作品を統一的に評価する難しさに起因しているに違いない。しかし、敢えて属性の異なる作品を較べて上記のような論争を起こすことに、こうしたコンペティションの意味があるのではないか。つまり、その作品のどこが優れており、何が駄目なのかを考えることが、アニメ全体の活性化になる。
 個人的には、今回の大賞は『マインド・ゲーム』で良かったのでないかと思う。『ハウルの動く城』は、当たり前過ぎるからだ。あまり日の当たらない『マインド・ゲーム』を大賞に選ぶことで、どこがいいのか、あるいはなぜあの作品が大賞なのかという反応も含めて、よりアニメとは何かを考える刺激になると思っている。
 
 また、短編アニメーション部門に、本年度のアカデミー賞短編アニメーション賞を受賞した『RYAN』(クリス・ランドレス監督)とノミネート作品『BIRTHDAY BOY』(パク・セジョン監督)の2作品がそれぞれ推薦作品、優秀賞になっているところに、このコンペティションのレベルの高さを垣間見ることが出来る。

 一方マンガ部門については、推薦作品段階では幅広い作品が取り上げられていたが、大賞、優秀賞、奨励賞の6作品はどちらかといえば社会性のテーマを持ったものに偏りがあったように見受けられた。エンターテイメント性はあまり重視されなかったようだ。それもまた審査員のひとつの見識であり、こうしたコンペティションの面白いところでもあるのだろう。

文化庁メディア芸術祭
東京都写真美術館 2月25日(金)~3月6日(日)
主催:文化庁メディア芸術祭実行委員会(文化庁/CG-ARTS協会)

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